いよいよ9月2日に低用量ピルが国内で販売されます。世界中で最も利用されている避妊方法ですが、日本においては今まで選択する事もできませんでした。 
 実は10年ぐらい前からいつ認可されてもおかしくない状態だったようですが、ずぅっとのびのびになっていました。何故そうなったか、さらに今年になって何故、急に動き出したか、詳しいことは新聞その他の報道に譲りますが、多分に政治の臭いがします。「まっ、ともあれ使えるようになるんだからいいか」と思っていましたが、これまたおかしなことが結構あって、実際使うのはなかなか大変な様子です。

 まずは良いところからお話しましょう。
 第一に、お産の経験のない女性にとって、日本国内で使える最も簡単で確実な避妊方法です。これは異論のないところでしょう。
 第二に、月経量が減るために生理痛は楽になり、貧血になりにくくなります。
 第三に、子宮体癌(子宮の奥の癌)になりにくくなります。ピルを飲まない人の約半分のリスクになります。
 第四に、卵巣癌になりにくくなります。婦人科の癌の中で最も発見が遅れやすく恐ろしい癌ですが、ピルを長く飲んでいると約五分の一のリスクになります。 
 その他、骨盤内感染症、卵巣のう腫や乳腺症、子宮外妊娠にもなりにくくなります。

 では悪いところ。
 まず、この原稿を書いている時点ではまだ決まってないのですが、結構値段が高くなりそうです。しかも保険は効きませんから全額自費です。あまり良いたとえではありませんが、2〜3年間飲み続ければ人工妊娠中絶手術1回分になりそうです。
 次に、必要最小限のホルモン量になっているために、飲み忘れたり、下痢をしたり、薬(例えば抗生物質など)の併用によって、避妊効果が極端に下がってしまいます。また、避妊については強力ですが、性感染症の防止には無力です。

 さらに、禁忌(薬を飲んではいけない条件)がたくさんあります。例えば「35歳以上でタバコを一日15本以上吸う人」、「異常な性器出血のある人」など、17項目もあります。健康な人が長期間飲むことを前提としているので厳しくしているのでしょうが、現在までの使用例で「まず問題ないだろう」とか、「注意して使用する必要がある」といったものまで、「ぜーんぶダメー!」となってはちょっと困ってしまいました。
 蛇足ですが、ピルはお医者さんの処方箋が絶対に必要です。ケーキに埋め込んで売ったら摘発されますから注意しましょう。

 夏本番となると涼しげな話というか怖い話がいいですね。「学校の怪談」とか「リング」とか。余談ですが、最近小学生の娘たちが『恐ろしい話をしてあげる〜』と言って「悪の十字架」(開くの10時か!)、「亀の呪い」(亀のノロイ!)などを話してくれます。随分昔に流行ったけど、小学生相手にもう一度ウケを狙おうなんて某少女雑誌の編集者さん。ちょっと子供をなめてませんか。

 さて、今回は真面目に「怖い話」です。子宮癌について勉強してみましょう。『癌なんてオバンがなる病気だろ、関係ないね』と言われるかもしれませんが、実は若いからこそ関係があるんです。最期まで読んでくださいね。
 子宮には出口(入り口かな?)の部分である「頚部」と、奥の部分である胎児が育つための部屋「体部」があります。それぞれの場所にできる癌は大きくタイプが違います。日本人には「頚部」にできる「子宮頚癌」が圧倒的に多く、子宮癌の約9割を占めています。

 30歳になるとお役所から「子宮癌検診のご案内」が届きますが、検査するのは主にこの「子宮頚癌」です。昭和30年に全国に先駆けてこの広島県で始まり、今では全国で集団検診が行われています。検診のおかげでかなり早期に発見されるようになり、また治療法もかなり早くからしっかりとしたものが確立していたので、「子宮頚癌」によって亡くなる方は随分と減ってきました。ただしその反面、最近20歳代、30歳代の若い世代に「子宮頚癌」が増えてきているんです。

 「子宮頚癌」になりやすい人は、妊娠回数の多い人、お産回数の多い人、複数のパートナーを持つ人、初体験の早い人だと言われてきました。もちろん女性ですよ。現在知られているところでは、「子宮頚癌」の発症に「パピローマウィルス」と呼ばれるウィルスの感染が関与しているのはまず間違いがないようです。ただし、全員が癌になるわけではありません。感染した細胞がさらに何らかの障害を受けて初めて癌になるようです。

 性交渉によってウィルスが感染するわけですから、今まで言われていた「なりやすい人」の条件も納得できます。さらに、初体験の年齢が16歳未満の人は、20歳以上に初体験する人の16倍。初潮から初体験までの期間が1年未満の人は、10年を越える人の26倍。20歳まで2人以上の経験者は、処女(死語かな〜)の人に比べ7倍。「子宮頚癌」になりやすいそうです。

 ほとんどの「癌」がそうなんですが、「子宮頚癌」も初期には全く症状がないのが普通です。かなり進んでから症状、つまり「出血」とか「汚いおりもの」とかが出てきます。早い時期で見つかれば子宮を残して将来子供を産むことも可能ですが、症状が出てからでは大変です。
 少し涼しくなってきましたか? 幸い子宮癌検診は簡単にできます。先ほどの条件に一つでも○のついた人は、できれば定期的に子宮癌検診を受けてください。
 エッチをしたなら癌検診。覚えておいてください。

 今年の梅雨は入梅直後からなかなか雨が降らないで、「梅雨の夏休み」って感じですね。まあ去年は梅雨明けがなかったんですから、今年は逆に梅雨がなくってもいいかな。でも、夏の水不足も困るし、農業関係の方などはもっと困りますから、やっぱりだめですね。そんな事を思っているうちに、さすがに梅雨は梅雨。ムシムシと暑い日が続きます。冬の間大人しかった「水ムシ」が騒ぎ始めるのもこの頃です。

 さて、この水虫はオヤジの専売特許のように思われていますが、実は日本の水虫人口は1千万人以上とも言われています。おおよそ10人にひとりですね。「結構悩んでいる人って多いいんだ。生足サンダルが気持ち良いけどガサガサした足見られるのイヤだし、でもジクジクするのイヤだし……」。
 水虫は「白癬菌」というカビが皮膚の中で繁殖しているのが原因です。裸足で乾燥した気候のところではそうそうかかるもんではありませんが、高温多湿の日本で厚手のルーズソックスに靴履きっぱなしとなると、まるで「白癬菌培養器」です。      
 「水虫」というとまず「痒い」というイメージですね。足の指の間がジクジクする「趾間型」、小さな水ぶくれができる「小水疱型」が、水虫の8割ぐらいを占めていて、これらは確かに痒みが特徴です。でも、残り2割は痒みがない水虫、「角化型」です。水虫を放っておいたりすると皮膚がだんだんと硬くなり(角化)、ボロボロと剥がれるような状態になります。最近足の裏が荒れてきてガサガサしてると感じているあなた。もしかするとこの「角化型」かも知れませんよ。

 痒みがないためにまさか水虫だとはつゆ思わず、「肌荒れ」と思ってほったらかしになっていることが多いようです。こんな状態になるとなかなか直らなくなってきます。硬くなったかかとを削ったり、水虫の薬を塗ったりして一旦治ったように見えても、「白癬菌」がしっかり残っていて再発を繰り返してしまいます。さらに、爪に感染を起こすと爪が変色してきたり、一部が厚くなって変形してしまったりします。「爪白癬」といいますが、こうなるとペディキュアどころではなくなります。

「爪白癬」、「角化型白癬」は塗り薬だけではほとんど効果がなく、飲み薬も使って、さらに何カ月もの期間をかけて治療する事が必要です。他のタイプもそうですが、水虫の治療は一に根気、二に根気、三、四がなくて五に根気。粘り強く治療してください。
 「おしゃれは足元から」というのはちょっと違いますが、水虫とおさらばしてみんな「きれいな足のお姉さん」になりましょう。

 以前に不妊症についてお話ししましたね。妊娠するのも結構大変なんです。ところで「妊娠の成立」って一体いつからなんでしょうか? 卵管で受精した卵は、分裂を繰り返しながら約一週間かけて子宮に移動します。子宮の中の正常な位置にうまくたどり着けば「着床」し、ここで妊娠が成立します。
 ところが受精卵は自分では動けません。卵管の微妙な動き、卵管の中に生えている産毛のようなものの動き、受精卵を認識する様々な物質。そういったものが互いにバランスを取って、不思議なことですが、何故かちゃんと子宮に受精卵を運んで行くのです。つまり、うまく行かなくってもおかしくないんですよね。 

 ここからが今日の本題です。
 受精卵が「子宮膣」以外の場所に着床する状態を「子宮外妊娠」といいます。多くは卵管に着床しますが、正常な所ではないのですからいずれ破綻が来ます。流産または破裂といった形を取るのですが、その時出血しますから血液がお腹の中に溜まります。発見が遅れると命の危険にさらされる事もあります。特に破裂の場合にはあっという間に大出血となりますから一刻を争います。大変な病気ですね。

 どのくらいの頻度かというと、全妊娠の約1%弱。生死に関わる病気としてはかなり高い頻度です。仮に女性が一生に二度しか妊娠しないと仮定しても、同級生の2クラスに一人は「外妊」となる確率です。実際の妊娠数はもっと多いでしょうから、結構身近な病気ですね。おっと失礼、「外妊」は子宮外妊娠の略称です。他にドイツ語または英語の略で「エクトピー」ともいいます。

 よくある不幸なパターンとしては、望まない妊娠をしてしまいすぐに中絶。その後、だらだらと出血が続いたり、次の月経がなかなか来なかったり、どうしたのかな?と思っていると、突然お腹が痛くなりショック状態。お腹がどんどん張ってくる。やっとのことで病院に飛び込むと、
 「子宮外妊娠です。すぐに緊急手術をします」
 目の前真っ暗です。

 話は変わりますが、市販されているものも含めて最近の妊娠診断試薬はかなり鋭敏で、受精後約二週間を過ぎるとほぼ判定が可能になっています。しかし、子宮内にちゃんと妊娠しているかどうかは「経膣超音波」を使っても受精後約三週間を過ぎないと、確実には診断できません。この約一週間の間は全員「子宮外妊娠の疑い」ですが、本当の子宮外妊娠でないことだけは確実に診断する必要があります。妊娠反応が陽性になったら、とにかく一度お近くの産婦人科へ受診してください。話はそれからです。

 新緑が目にしみて一年中で一番さわやかな季節がやってきました。大型連休をアウトドアで過ごされる方も多いと思います。ただ、この季節は紫外線の量が最も多い時期です。今年は「美白」が主流だそうですから紫外線対策は万全にしておいた方が良さそうですね。
 しかし「美白」は確かに目を奪われますが、「蒼白」は目をそむけてしまいます。今日のお話は顔面「蒼白」の原因となる「貧血」についてです。

 急に立ち上がった時に力が入らず倒れてしまい、『ちょっと貧血を起こしちゃった』とよく言いますが、正しい使い方ではありません。「貧血」とは血液の成分のうち特に赤血球が少ない状態(血が薄い)を言います。
 赤血球の主な役割は身体中に酸素を運ぶことです。全身の細胞は一定の酸素がないと活動できませんから、「貧血」になると酸素の欠乏症状が起きやすくなります。前述の立ちくらみ、めまい、失神、頭痛、便秘、下痢、食欲不振、無月経等。また長く放置していると心臓に負担がかかり、通常の倍近くも心臓が腫れてしまうこともあります。

 「貧血」の原因はいくつかありますが、女性に多いのは「鉄欠乏性貧血」です。赤血球を作るためには鉄が必要ですが、鉄は身体で作ることはできません。特に思春期以後の若い女性の場合、成長期のために鉄の必要量が高まっているうえに月経のため赤血球が失われます。そこへさらに偏食や無理なダイエットが重なると、知らないうちに重症の「貧血」になっていることがあります。
 献血されたり健康診断を受けられた女性のうち、1割から2割に「貧血」があると言われています。『いつも言われているし、何も症状がないから大丈夫』と思わないでください。「貧血」自体が身体を蝕んでいきます。さらに隠れた病気を見過ごしてしまうことにもつながります。

 まずは朝食を摂りましょう。コーヒー、紅茶を控えめにして牛乳、ジュースも飲みましょう。昼食は丼物とかカレーライス、麺類、サンドイッチ等だけでは糖質に栄養が偏っています。乳製品、果物を加えてください。緑黄色野菜にも鉄はたくさん含まれていますが、これは吸収のあまり良くない非ヘム鉄です。魚類、肉類に含まれる吸収の良いヘム鉄を有効に組み合わせてください。そして、これは最も大切なことですが、「貧血」と言われたら女性の場合はまず婦人科で異常がないか相談してください。そして必要な治療は根気よく受けてください。
 今年は健康的な輝く「美白」をゲットしちゃいましょう。

 五月になると、街のあちこちにカーネーションが見られるようになります。父の日はいまひとつですが、母の日の盛り上がりは毎年すごいものがありますよ。別にすねているわけではありませんが、やはり「母は強し」です。
 今年はプレゼントを贈る側でも、いつかは贈られる側になりたいと思うのは皆さん同じですよね。でも、思いを叶えるために大変な努力をしている女性も、実は決して少なくないのです。

 避妊をしないと普通、一年間でおおよそ9割のカップルに妊娠が成立します。残り1割が「不妊症」ということになります。「畑が悪い」とか「種が悪い」とか言いますが、不妊の原因は女性側、男性側もほぼ半々です。ひょっとすると、今話題の環境ホルモンの影響で男性因子が少し増えてきているかもしれません。
 男性側については、精液検査でまずほとんど判定ができますから、あまり手間はかかりません。でも、なかなか協力が得られないのが実は男性側なんです。精液量が2〜4ml、精子数が2000万/ml以上、動いている精子の割合が50%以上、正常な形の精子の割合が50%以上あればまず正常と考えられます。体調による変化もありますから、一度の検査で悪くても決して悲観する必要はありません。

 女性側についてはいくつかの因子を考えなくてはいけません。排卵はちゃんと起きているか、受精の舞台となる卵管が詰まったり、動きが悪くなっていないか。赤ちゃんを育むための子宮は正常か。ホルモンのバランスはとれているか。などなど、結構大変です。さらに月経周期の時期によってできる検査が限られてきますので、どうしても時間がかかります。
 治療としては、当然の事ですが原因の治療と、さらに排卵のタイミングをとる事が中心になってきます。排卵後の卵子の寿命が約一日、射精後の精子の寿命が約三日間。受精精能力を考えると、もっと短い時間帯の中でタイミングをとる必要があります。患者さん夫婦はもちろん、私たち産婦人科も、排卵後のニ週間は「月経が来ませんように!」と祈りながら毎日を過ごしています。

 不妊の治療の分野は発展がめざましく、どんどんと新しい技術が開発されています。体外受精、いわゆる「試験管ベビー」と言われていた方法も、広島市内のいくつかの施設で活発に行われています。その反面、まだ解明されていない事実も星の数ほどあり、さらに倫理的な問題もたくさん含んでいます。医学がいかに進歩しても、子供は作るものではなく授かるものです。
 そう考えると母の日がより一層大切な日に思えてきませんか?

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